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STORY

残酷森楽団

 残酷な森に生まれ育って、楽団員たちがようやく楽器をおぼえたとき、団長たる猫のンャはその長い尻尾を逆立てて叫んだものだ。
「それではここに残酷森楽団の結成を宣言する!」
 楽団員たちには正直なんのことなのかさっぱりわからなかったが、それでもみんななんとなく「おー!」とか「わー!」とか叫び返してた。おまけにそれぞれ自分の楽器を適当に演奏してみせたものだ。その騒音と雑音といったらひどいものだったが、誰もなんにも気にしなかった。団長でさえ得意げに胸を張って長いひげをぴんと伸ばしてた。そのあとご丁寧におじぎまでしてみせたものだ。腕を胸の前にまわして優雅に。団長は話を続けようとしたが、いつまでたっても楽団員たちの大騒ぎが静まらないものなので、最初はせきばらいしてみせたり、両手で静まれ静まれと身振り手振りしていたが、結局のところひどく気の短い団長はすぐにまた叫んだ。
「静まれ!」
 相変わらず楽団員たちはぽかんとしていたが、おかげで演奏のほうも手が止まった。最後までぷーすか変な音を出してた吹奏楽器も、急にびっくりしてきょろきょろしてた。楽団員たちはお互いに顔を見合わせて、首をかしげたり自分の楽器をおどおどとさわったりしていたが、団長のことなんててんで頭にないみたいだった。みんなが考えていたのは、どうして自分たちなんかが楽器を持ってるのか、それだけだった。団長は相変わらず尻尾を逆立てたまま、おごそかに言った。
「われら残酷森楽団の仕事は、われわれの残酷なる奏でを他の森の連中に聴かせることに他ならない。われわれは営利を目的としない。われわれの演奏は非常に高貴であると同時に、またすべての聴衆に向けられている。ただひとりの例外もない。すべての聴衆に、すべての森に、われわれの残酷なる調べは開かれている。われわれは決してわれわれの残酷さを惜しんだりはしない。むしろ、ひとりたりとも余すことなく、われわれの残酷で染め上げ、すべての森という森を、われわれの残酷で焼きつくす」
 満月がぽつんと浮かんでいた。さっと風が吹いて雲が流れ、月を隠した。団長の瞳がきゅっと細くせばまった。風に当たって尻尾が余計に逆立った。
「残酷さ。われわれが生まれながらに受けた残酷なる仕打ちを決して忘れてはならない。われわれは残酷に育った。われわれは残酷なる楽器、残酷なる音色を得た。われわれは残酷だ。ありとあらゆる聴衆、ありとあらゆる森を、残酷で染めろ。忘れるな、残酷こそがわれわれだ。決して忘れるな」
 楽団員たちはもうわれを忘れて、楽器なんて放り捨ててしまい、みんなして冗談なんか言って、笑い転げたりしてた。

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