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STORY

『蛇』より抜粋: 転がって……

 転がって、転がって、転がり落ちて割れた。割れた気がしない。どこか巣だった。なにかの巣には違いなかった。他に丸いのがいっぱいいて、転がっていた。みんな隣りあっていた。表面をくっつけて並んでいた。なかよく。ころりと転がっても、くるりと回転してもとに戻ってこられた。大抵はそうしていた。上のほうをすさまじい勢いで通過するものがあって、そのときにはある力を受けるのを感じた。圧力といったような。かげったような気がし、冷たくなったり寒くなったりした。それが去っていくとき、また似たような圧力を受け、転がるものもいる。実際、吹き飛ばされて転がったこともあった。ついに去っていくと、やっといつものように戻れた。みんな転がされていて、それはあの圧力のせいとは限らないが、ばらばらになっている。もう位置関係がよくわからない。誰と隣りあって肩を寄せあっていたのだろうか。もう誰が誰だかよくわからない。そのうち、またころころと転がって、みんなそうしているに違いないのだが、もとのところに戻る。実は確認もできないし、よくわからないが、もとのところに戻った気になる。とにかくそういう気持ちになって落ち着く。そこでまた誰かと触れあい、隣りあって並ぶ。これは誰か、さっきまで隣にいたものだろうか。もう二度とわからない。お互いにわからない。どうも、巣が広くなったような気がした。隙間がふえた。数が減ったのかもしれない、あの丸いのの数が。よくわからない。誰がどこにいるのか? 隣りに誰かはいる。でも他のはどこにいるのだろうか。いるにはいる、どこかに。転がってみないと、わからない。偶然ぶつかる、か、大抵はぶつかる。それでわかる、ああ、いるな、と。それでともかくも、もとに戻ってそこでおとなしくしている。隣のとくっつきあって眠った。他に、どこかよくわからないところから、するするとやってくるものもある。それは音を立てる。するすると、巣のなかをすべり、がさごそと巣が鳴る。巣のなかを巡回するように動いて、どうやら、みんなの間を通り抜けている。隣のものとの間にも割り込んでくることがあって、そういうときはどうしようもなく動かされ、転がり倒されることもあった。間に割り込まれるとき、隣のものの感触のかわりに、そのはうものの表面をこすりつけられ、変な感触を味あわされる。冷たく、ざらりとしていて、固すぎず、柔らかすぎない。しなやかな感じで延々となで回され、やがて去っていく。それまでに転がらないでいられることは少ない。みんな等しく間に割り込まれているため、それが去ったあとはほとんどのものが転がって、位置がばらばらになっている。ころころと転がってもとのところに戻り、戻ったつもりになっていると、隣りに誰もいなくて驚く。もう少しだけ転がってみると、誰かにぶつかり、そこに落ち着いた。そして気づく、また隙間がふえたな、と。やがて転がり落ち、割れた。

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